新しい材料の探索を高速化するデジタルトランスフォーメーション
従来型アプローチから新材料をMake・Test・Decideする包括的なデジタル ソリューションに切り替える必要性
今日の材料科学者は、複雑なナノ構造を設計し、トポロジー的に複雑なアーキテクチャを比較的簡単にモデル化できます。しかし、他の分野とは違って、時代遅れのワークフロー・データストレージ・分析ツールを捨てきれずにいます。
この進化のパラドックスはアプリケーション側で特に顕著である、とPerkinElmerケモインフォマティクスグループの研究者は新しい白書で論じています。生分解性プラスチック・ハイドロゲル・電池電解質・香料など、特定の用途向けの新しい材料を開発する際に、材料科学者は日常的に、昔ながらのスプレッドシートでタブをめくりながらデータを調べています。
白書では、材料科学者がこのありふれた状況を改善していく方法について、新しいビジョンを提唱しています。オンライン検索エンジンの機能とスピードに、スマホアプリの柔軟性と使いやすさを融合した材料開発におけるエンドツーエンドのアプローチについても詳述しています。さらに、このビジョンがどのようにPerkinElmerの新しい統合型インフォマティクスプラットフォームを支えているかについても説明しています。
近年、デジタルトランスフォーメーションは、ちょっとしたバズワードになっています。それでも、優れた最新システムの導入は、とても重要な事です。それは、より優れた科学研究や意思決定をできる事こそが、商業上の利点に繋がるからです。
Make・Test・Decide
材料の開発プロセスは、Make・Test・Decideという3つのカテゴリに大きく分類されます。いずれのカテゴリにおいても、新しいデジタルテクノロジーは効率を高め、バイアスを取り除き、再現性をサポートできます。
Make(材料の調製段階)においては、研究者がテスト用の新しい素材を合成・調整しますが、この段階では優れた記録システムが不可欠になります。長年の実績があるラボ用の紙のノートは、何世紀にもわたってその目的を果たしてきました。その改良版である電子ノートブック(ELN)では、データの記録が簡素化されました。しかし、後でそのデータにアクセスするのが難しい場合があります。何故なら、第1世代の電子ノートブックでは、ストレージスペースを最小限に抑えて開発されたデータベースにデータを保存するからでした。それとは対照的に、タグ付けテクノロジーでは、ストレージスペースよりもデータのアクセス性が優先されるため、ソフトウェアとユーザが無制限数の記述タグをデータに追加することができます。
Test(分析・評価段階)では、材料の様々な特性を測定します。そのため研究者には、検証用パラメータの最適なセットを客観的に選択するための方法が必要になります。従来、検証用パラメータの選択は、専門家の直感によって行われてきましたが、データ主導型のアプローチを採用すれば、バイアスを排除し、最適ではないパラメータが選択されるリスクを最小限に抑えることができます。
Test段階で実験データを処理する際に、材料科学者が好んで使うアプローチが2つあります。1つ目は、柔軟な反面、専門家でないと作成が難しい社内で開発したスプレッドシートです。2つ目は、使いやすい半面、シングルタスク用に設計されているために変更が難しいカスタムメイドの市販ツールです。材料科学者が柔軟性と使いやすさのどちらかを選択しなければならないのではなく、スマートフォンのアプリに似た環境で、データ処理タスクに適したモジュールを、掌の上で選択できるようにするのが理想的である、と白書の著者は述べています。
Excelのような汎用ツールと、カスタムメイドのツールのどちらかを選ばなければならない不安を解決する1つの方法は、アプリケーションスイートのある環境を整えることです。
最後に、極めて重要なDecide段階では、研究者は開発のための最も有望な候補材料を選定します。白書の著者は、ワークフロー改善のためには、Google社やAmazon社でデータ収集とその迅速なアクセスのために採用している、インデックス化テクノロジーと同じものを利用することに、研究者が目を向けるべきだと述べています。これにより柔軟性とスピードの両方が提供されます。この柔軟性とは、インデックスが複数のデータソースとフォーマットからデータを組み込むことができることであり、スピードとは、インデックス化されたデータに基づいて選択肢を生み出すアルゴリズムが非常に効率的であることです。これは、Excelシートから苦労してデータを抽出し、候補材料を選んでいた従来のアプローチとは対照的です。
包括的なインフォマティクスプラットフォームをMake・Test・Decideのプロセスに適用すると、新しい材料の開発が大幅に簡素化され、関連するコストが削減されます。このように、材料研究のためのテクノロジーへの投資は、大きなインパクトをもたらします。
材料研究分野のお客様は、PerkinElmerの統合型インフォマティクス ソリューションで、材料開発をより効率化し成功に導くことができます。具体的には、ChemDraw®、Signals Lead Discovery(現在の名称はSignals Inventa™)、Signals Notebook™、TIBCO® Spotfire®などの強力なエンタープライズ製品スイートを活用することで、企業は迅速に革新を遂げて、製品開発と市場投入までの時間を短縮できるのです。
PerkinElmer Informaticsは、材料科学分野のお客様が、製造に必要な材料のみならず、エネルギー・化学物質・食品等の様々な研究開発に大きな改革をもたらすことを可能にします。私達が研究開発のサイクルを革新・加速するお手伝いをすることで、お客様が製品を短期間で市場に投入でき、科学的洞察や画期的イノベーションを増やすことができます。
統合型インフォマティクスが、どのように効率的で成功する材料開発に寄与するのかについては、新しい白書『Digital Transformation Journeys for Material Science』をご覧ください。PerkinElmer Informaticsでは、特殊化学品・農薬・エネルギー・石油化学・香料・食品飲料・電子機器などの分野で、材料科学における数々の産業をサポートする産業セグメント向けソリューションを提供しております。

デイヴィド ゴサルベス 博士(David Gosalvez, Ph.D.)
プロダクトストラテジー & ビジネスディベロップメント科学ソフトウェアの分野で約20年の経験を持つデイヴィド ゴサルベス(David Gosalvez)は、科学的なユースケースに関する幅広い知識を持ち、技術的・領域的な専門知識を併せ持つ稀有な存在です。革新的なソフトウェアソリューションによって科学の効率化と質の向上を目指す情熱的な提唱者でもあります。Davidは、製薬・化学業界の科学者やIT部門と協力し、Revvity Signals Softwareのポートフォリオの方向性を決定しています。また、他の科学ソフトウェアベンダーと協力し、補完的な機能を当社のソリューションに統合しています。ケモインフォマティクス担当ディレクターとして、ChemDraw®とTIBCO® Spotfire®のLead Discoveryの持続的な拡大に携わりました。それ以前は、学際的な科学技術チームを率い、現在は、 Revvity の Signals プラットフォームを支えている新しいデータマネージメント技術の開発に取り組んでいます。また、CambridgeSoft社ではアプリケーション開発担当のエグゼクティブディレクターとして、Oracle Chemistry CartridgeとChemBioOffice Enterprise Suiteの市場投入に携わりました。