ChemDrawの色彩と次元がもたらす、新しい明確さ

ChemDraw

有機化学では、白と黒で構成される2次元の平坦なビジュアル表示が、長い間使われてきました。しかし、人間は視覚に頼る生き物であるため、色や遠近感がある方が、物事をより明確に理解できる傾向にあります。

では、有機化学物質を可視化する際に、色や次元があるとどうなるでしょうか?

最近まで、ChemDrawを使うお客様は、原子の種類を元素ごとに色分けしたり、原子ラベルや結合の色を変更したりすることしかできませんでした。実際、赤と青で示す結合で、ある程度はうまくいっていました。しかし、3つ目の色が必要となると、あまり役に立たなくなりました(特に、ブラインドのない室内で低品質のプロジェクターを使用する場合には!)。

ChemDrawにおける色

この問題に対処するため、炭素環の環構造のカラーリング機能と、結合と原子を色でハイライトする補完機能を導入し、化学研究におけるコミュニケーションを円滑にしました。

ChemDrawの従来のカラーリング機能と、新しいカラーハイライト機能の違い

 

これにより、学会での発表でも、週1回のラボミーティングでも、「緑色の二重結合」や「黄色のアミド結合」といったことが言えるようになり、聞き手が発表の内容を理解していることに自信が持てるようになりました。

 

3D Chemistry機能

 

カラーリングの選択肢が広がったことと同時に、最近、3D Clean-up機能も追加されました。このアルゴリズムは、芳香環の3Dの状態を維持しながら、金属錯体の取り扱いを強化できるように機能拡張されており、遠近法で二重結合をより効果的に表示できます(例:3次元で「横から」見た二重結合)。

 

メタロセンなどの複雑な3次元構造の作成が、これまでになく簡単に。
ChemDraw Templatesフォルダ内の2D分子を、3D構造に正確かつ簡単に変換。

 

この重要な機能の改善を取り組むうちに、私達は化学研究のコミュニケーションという観点からみて限界があることに気づきました。3D回転モデルは、化学者がChemDrawで見るに分には役に立つかもしれませんが、プレゼンで聴衆に顔を向けながら、ChemDrawを使わずに表示したり共有するような場合には、多くの余計な手順が必要でした。

 

しかし、それは今日までの話です。

 

頭の中にある3D

 

ネイティブでインタラクティブな、分子などをアニメーションにできる3Dオブジェクトは、3MF形式を用いて既にMicrosoft PowerPointで利用できます。3MFは、3Dプリントを手がけるMicrosoft社などの大企業により共同開発されたオープンソースの3Dプリントのためのデータフォーマットです。

 

その使用事例を念頭に、分子を3Dプリント用に保存するための「3MFで保存する」オプションをはじめに実装しました。しかしすぐに、この機能の可能性を十分に引き出すのは3Dプリントではなく、PowerPointの3Dオブジェクトにあることに気づいたのです。

 

このため、3D分子を3MFオブジェクトとしてクリップボードにコピーし、PowerPointのスライドに簡単にペーストできる「3MFでコピーする」というアクションを作りました。ベータテスタによる初期のフィードバックから、複数の3Dレンダリングスタイルを提供し、従来の「ボール&スティック」表示と「スティックのみ」表示の実装が必要であることが示唆されました。

 

ChemDraw 3D
最新のカラーリングオプションと3D表示による(+)-Plumisclerin A分子の様々な表示。
上段:ChemDrawの表示
下段:3MFオブジェクトとしてコピーし、PowerPointにペーストしたChemDraw分子

 

3MF機能を開発し、天然物のような複雑な分子を用いて検証した経験から、2D分子骨格を3Dのビジュアルに表示する難しさに取り組む必要があると感じました。

 

これは、2Dと3Dの化学構造を描く際の基本的な問題です。結局のところ、3D形状の取り扱いにおいて、相関するウェッジ結合、ハッシュウェッジ結合、過度に細長い交差結合は、ハードな頭の体操なのです!

 

新しい3MFエクスポート機能の開発と検証を進めるなかで、この機能がChemDrawバージョン20で導入されたカラーハイライト機能の力を示すのに、最適な使用事例であることに気づきました。そして、科学者が聴衆にプレゼンを行う際に、簡単に正しくメッセージを伝えたり、分子の重要な部分に注目を集めたりすることができるように、分子のカラーのハイライトを2D表示から3Dモデルへと簡単に移行する方法を研究してきました。

 

その結果、2Dのハイライトから3Dのカラーの「透明チューブ」を作成し、それらを3MFモデルの結合の周囲に追加しました。

 

3D model with a molecule of Phlegmadine C
Phlegmadine C分子でカラーハイライトを3Dモデルに移行させる機能により得られるメリットに関するイラスト。
2D構造の各部分を簡単に3D表示に関連づける。
(下段と上段で比較)

 

ユーザの皆様に新機能をご紹介でき、とても嬉しく思いますし、好評であればなおのことです。フル3MF/カラーハイライトの機能は、ソーシャルメディアでも大変ご好評をいただいております。

 

化学研究のコミュニケーションのためのゴールドスタンダードであるChemDrawの詳細は、こちらへどうぞ。

 

 

 

 

 

node:field_display_author:entity:field_person_image:entity:image:alt
ピエール モリユー 博士(Pierre Morieux, Ph.D)
Revvity Signals Software ChemDraw® Wizard担当 ケミストリープロダクト マーケティング マネージャー

モリユーは、Revvity Signals Softwareのケミストリープロダクトのマーケティング マネージャーで、化学者の様々なニーズを、時短や発見を実現する統合ソフトウェアアプリケーションに変えていく支援を行っています。それまでは、2017年からChemDrawのグローバルプロダクト マーケティング マネージャーを担当し、ChemDrawのバージョン17から21や、ChemOffice Suiteの開発と市場投入を監督しました。モリユーは、2012年に化学分野のフィールド アプリケーション サイエンティストとしてPerkinElmer(現Revvity)に入社しました。その前には「How to draw Viagra under 20 sec in ChemDraw」というバイラル動画をYouTubeで公開しています。モリユーは、ENSCP Chimie ParisTechで化学工学の学位(2006)、University of North Carolina at Chapel Hillで薬学のPh.D.(2010)を取得し、フランスのISIS Institute of the University of Strasbourgで生物有機化学のポスドクを修了しました。