直交アッセイデータで治療法の発見を強化

治療法の発見は、新薬候補を最適な形で商業的成功に導く、複数の補足的分析法に依存しています。

ウェットラボでは、様々なアッセイ法がそれぞれの強みに応じて利用されています。異なる選択性を持つ複数の方法を組み合わせること(根本的に異なる検出原理や定量原理を用いて、共通する値や特徴を測定する直交アプローチ/直交法)は、リード候補の性質を最大限に理解するための、創薬における重要な確定ステップです。

リード候補の特定では、直交アッセイアプローチにより偽陽性の除外、または一次アッセイで特定された活性が確認されます。

このアプローチは規制当局に好まれています。FDA、MHRA、EMAはすべて、ガイダンスの中で、基礎的分析データの増強のために直交法を使用すべきだとしています。

一般的な直交アプローチには、どのようなものがあるでしょうか?

直交アプローチは、選択された一次手法のみで決まります。例えば、赤外分光法は、質量分析法の適切な直交アプローチと見なされています。直交アプローチはFDAに承認された確定方法であり、実施される各手法は、二次的方法、つまり確定方法として選ばれた2つ目の手法を補完するものでなければなりません。

直交アッセイデータに伴う課題

直交的確定で幅広い機器や方法を利用できることを考慮する際、データラングリングが課題となります。

科学者はプロジェクト全体にわたり詳細な解析を行うため、個々の結果を同時に引き出すことの難しさについて、しばしば言及します。科学者が使用するツールやデータソースには様々なものがあり、例えば、ロースループットからウルトラハイスループットまでの酵素スクリーニングや、イムノスクリーニング(HTS)、ハイコンテントスクリーニング(HCS)、in vivo試験、表面プラズモン共鳴(SPR)などがあります。ラボデータ管理や分析のための最も重要な前提条件は、あらゆるモダリティとデータタイプに対応できることであり、それをユーザーが1つのプラットフォームで、すべてのアッセイデータから結果を検索し、統合できることです。

データ管理で研究者が遭遇するもう1つの重要な課題は、様々な科学事業にわたり効果的なコラボレーションを実現できるかどうかです。アッセイ開発者およびHTSや二次スクリーニングを担当する科学者の間のデータ共有は、研究結果をシームレスに移行できるかどうかにかかっています。

科学者はアッセイから得られた個々の結果を統合し、データに基づいて次のステップを決定しなければなりません。そして、この意思決定において、直交実験が重要な役割を果たします。直交法から得られた結果が一貫した結論であれば、そのデータは信頼できるものであり、以降の決定はそのデータに基づいて下すことができます。

直交アッセイ開発の使用事例

私達は直交アッセイの開発でパートナー企業と幅広く協力してきました。Carterra社とのプロジェクトでは、AlphaLISAを補完するためにHT-SPRを用いて発見の強化に取り組みました。一次的方法であるAlphaLISA FcRn結合アッセイは、FcRnに対する治療用抗体の相対的親和性を測定し、生体内での半減期を予測するために使用される堅牢なハイスループット イムノアッセイです。そこで研究者は、AlphaLISAから得られた結果を補強するための直交アプローチとして、HT-SPRを使用しました。

Pelago社などのPerkinElmerパートナー企業も、それぞれのシステムを補完して確認するために、直交アプローチを用いています。PerkinElmerでは長年にわたり各市場で直交アプローチを奨励しています。

Signals Rearch Suite_HighRes

PerkinElmer Informatics Signals Research Suite™

Signals Research Suiteは実験計画作成からデータ収集やチーム全体の複合解析まで、研究者をサポートするように設計されています。

Signals Research Suite は複数の実験から得られた結果の収集、統合、インタラクティブな解析のためにシームレスに連携する以下の3つの主要ツールで構成されています:

  • Signals Notebook™ は、電子実験ノート(ELN)です。ラボ実験に関する情報が収集される場所です。
  • Signals VitroVivo™ は、ローデータを実用的な結果に変換します。
  • Signals Inventa™ は、Signals VitroVivoから様々な結果を収集し、データを統合して解析し、SAR分析用のインタラクティブなレポートを生成します。

ハイコンテントスクリーニングも直交アプローチとして使用できるため、多くのResearch Suiteユーザーは、Signals Image Artist™をSignals VitroVivoと併用しています。Image Artistは正式にはResearch Suiteに含まれていませんが、ユーザーはHCSシステムや細胞画像処理システムからの画像データのアクセス、分析、共有の後に、Signals VitroVivoによる一次解析の結果を使用して、画像データとヒット選択のプロファイリングを行います。    

Signals Research Suiteを用いたデータ収集

アッセイ開発の場合、すべてのアッセイ法にわたる柔軟な一元化データと計算管理を実現しながら、あらゆる種類のアッセイ結果を収集、分析できることが不可欠です。すべての機器データは、簡単な構成のガイド付きワークフローを通して利用でき、ITへの依存をなくす必要があります。装置データのインポートからレポート作成までの全プロセスは、数分で処理されます。

Signals Research Suiteはこれらの必須の機能のほかに、研究間の分析、in vitroデータとin vivoデータの統合を基に、新たな候補化合物のインタラクティブなビジュアライゼーションを生み出し、あらゆる治療領域にわたりレポートを作成します。科学者はあらゆる手法・モダリティ・データタイプについて、ワークフローを完全に管理する必要があります。私達の目的は、1回限りのアッセイ開発であっても、より高度なアッセイであっても、使用可能な柔軟性と、幅広い手法および膨大な量のデータに対応する拡張性を備えたプラットフォームを、科学者に提供することでした。

直交アッセイ開発では、多彩でインタラクティブな解析と統合的データ管理システムとの組み合わせが、創薬の加速と強化に極めて重要であることが分かります。

皆様のラボでの創薬におけるアッセイ開発に特有の課題の解決に、Signals Research Suiteがどのように役立つのか、是非ご覧ください

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クリストフ・ゲンツレ 博士(Dr. Christof Gänzler)

クリストフ・ゲンツレ(Christof Gänzler)博士は、ヒトパピローマウイルスワクチンに取り組んでいる独・ハイデルベルクのGerman Cancer Center(dkfz)から分子生物学の博士号を取得しました。これまで、TIBCO Spotfire社に参加する以前に、LION Bioscience社でScientific Bioinformaticsのコンサルタントとなりました。そこで中央ヨーロッパのセールスコンサルタントチームを統率し、その後、Zephyr Health社に入社。その後、PerkinElmer InformaticsのScientific Analytics担当マネージャーに就任しました。近年は、バイオプロダクト マーケティングを担当していました。