データ管理を支援し、ワークフローを改善する新しいソフトウェア
堅牢なデータ管理・データ分析ツールは、医薬品開発や創薬に失敗する確率を最小限に抑えるのに役立ちます。治療用の分子・タンパク質・遺伝子の研究や創製の成否は、組織内外の多数の情報源から得た膨大なデータの効率的な集約と、正確なレビューにかかっています。したがって、薬剤候補と開発に関連する膨大なデータセットには、情報を保管し分析するための効果的なツールが必要です。膨大な規模のデータには、情報を処理するためのインテリジェントなアプローチも必要です。
Excelとレガシーデータシステムの問題点
製薬業界の小規模組織の多くは、適切なデータシステム構成やオントロジーのための時間やリソースが不足しています。多くのスタートアップ企業では、Excelのような従来のやり方に依存していますが、そのようなツールでは、昨今のデータ負荷に対し力不足であることにすぐに気づくことになります。
データ分析の目標は、製薬企業が開発する薬剤を決める上で必要な情報すべてを明らかにすることです。現在のソフトウェアは、これらの大規模なデータセットを操作して読み込み可能なフォーマットに変換し、ビジュアライゼーションでデータを表示し、組織の目標に合致する最も重要な洞察を明らかにする必要があります。
さらに、医薬品開発・創薬データの管理に使用するシステムは、構造活性相関(SAR)表などのような使用頻度の高いデータ形式の構成・操作ができなければなりません。製薬関連の分析に不可欠なSAR表は、化合物の特性と化学構造の関連性を分析するために使用されます。
Excelのような従来型のシステムには、以下のようないくつかの懸念点があります。
- 不十分なオートメーション:Excelによるデータ管理は、データの手入力に頼る場合がほとんどです。手作業による入力や操作では多くの工数を要するだけでなく、必然的に人為的ミスを招きます。
- 限定的な拡張性:Excelや類似ツールでは、大量のデータを効率的かつ正確に処理できません。
- 互換性の低さ:Excelベースのプラットフォームは、他のツールやシステムとの統合が容易にできない場合があり、異なる部署や外部組織とのデータ共有が難しくなります。
- 脆弱なセキュリティ:小規模企業にとって、多くの場合、集約した創薬情報は最も貴重な知的財産(IP)です。Excelには、サイバー攻撃や情報流出を効果的に防護する強固なセキュリティ機能がありません。
機能の不足に加え、セキュリティが不十分なデータシステムを使用すれば費用もかさみます。
- 不十分な意思決定:データ管理の非効率性・不正確性は、意思決定プロセスに悪影響を及ぼします。
- 機会損失:製薬業界では、意思決定への支援が少ないと、その多くの場合、競争上の優位性が損なわれます。
- セキュリティ侵害:サイバー犯罪者が機密情報を乗っ取ったり、公開したりすることで、金銭的な損失が生じます。
- 高額なシステムメンテナンス:連携していないツールのメンテナンス・更新を別々に行うことは、費用と時間がかかります。
FAIR原則
FAIR原則は、デジタルデータの4つの特性(Findable=見つけられる、Accessible=アクセスできる、Interoperable=相互運用できる、Reusable=再利用できる)に基づいています。FAIR原則を創薬・医薬品開発データに適用すれば、時間と費用を節約できます。
欧州の最近の研究では、保健衛生研究の管理にFAIR原則を適用しない場合のコストの高さが明白に示されています。欧州委員会の2018年の報告書では、FAIR原則を適用しない場合、欧州連合(EU)全体で年間約102億ユーロの直接的な損失が生じると推定しています。また、データ管理に関するイノベーションの機会を失うことで、さらに160億ユーロの損失が生じると推定しています。結果として、FAIR原則を適用しなかった場合のEU全体でのコストの総計は、概算で年間262億ユーロとなります。さらに、欧州委員会が今年発表した別の報告書では、FAIR原則を適用すれば、EU全体で毎月、データ管理に割り当てられた時間の56.57%である116,800ユーロを節約できることが示されています。
現行のデータ管理システムは、テキストや数値以外にも、多様なタイプのデータを取り込められる、拡張性の高いストレージを備えています。さらに、膨大な量の計算に対応するための処理速度が向上し、新しいアルゴリズムによってディープラーニングが実現し、予測分析が容易になりました。
Signals Inventa™
堅牢なデータ管理・分析ツールに対する製薬業界のニーズに応えるソリューションとして、Revvity Signalsでは、より高い精度・効率性・安全性に優れた統合型プラットフォームSignals Inventaをご提供しています。以下に、Signals Inventaの利点をいくつか紹介します。
- 拡張性:Signals Inventaは、膨大で複雑なデータセットに対応できるように設計されているため、迅速かつ正確な処理とデータ分析ができます。
- リアルタイムデータ:リアルタイムデータから洞察を得ることで、十分な情報に基づいたタイムリーな意思決定ができます。
- 自動化:Signals Inventaがあれば、多くのデータ管理・意思決定支援プロセスを自動化でき、エラーを起こしがちな手作業による操作やデータ入力を最小限にできます。
- セキュリティ:データ暗号化・多要素認証・アクセス制御などの高度なセキュリティ機能により、Signals Inventaシステムをサイバー攻撃やデータ漏洩から守ります。
- カスタマイズ:Signals Inventaは、お客様独自のワークフローやプロセスに合わせてカスタマイズできます。
データを科学データレポジトリにロードする前に、その後の保管場所・アクセス・統合に備えて、データのカテゴリ化・正規化・アノテーションについて慎重に検討することが必要です。選択するテクノロジーは、企業のニーズや目的の変化に対応できる、堅牢で可塑性のあるものでなければなりません。
ダニエル C ウィーバー(Dr. Daniel C. Weaver)博士
プロダクトポートフォリオ ディレクターウィーバー博士は、Revvity Signalsのリードディスカバリー ソリューション ディレクター 兼 ソリューション アーキテクトです。Revvity(旧PerkinElmer)入社前は、コロラド州ボルダーにあるArray Biopharma社でサイエンティフィックコンピューティング ディレクターとして、科学ソフトウェアの開発・買収を全面的に主導していました。ウィーバー博士のチームは、過去10年間にわたり、ターゲット同定から創薬・臨床開発・トランスレーショナルメディシンに至るまで、科学的な取り組みを支援するシステムを生み出してきました。それ以前は、Genomica社ジーンエクスプレッションアナリシスのリードサイエンティストでした。ウィリアム B ウッド(Dr. William B. Wood)博士の指導の下、初期発生のパターニングを研究し、University of Colorado, Boulder校で発生遺伝学の博士号を取得しました。