NEXUS 2022欧州・北米の総括:アクセラレーション・コラボレーション・トランスフォーメーションにフォーカス

NEXUS 2022 Blog

先日、PerkinElmer Informatics主催の2つのNEXUSユーザカンファレンスが、盛況のうちに開催されました。10月11日~12日のスウェーデンでのイベントは対面式で、10月18日~19日のNEXUS North Americaはバーチャルで行われました。

NEXUSとは?
NEXUSユーザカンファレンスは、PerkinElmer Informaticsのチーム・お客様・パートナーの皆様が一堂に会してコミュニティ内の交流を深める重要な集まりです。参加者の皆様の経験や成功事例を共有し、最新トレンドについて議論し、インフォマティクスの発展を確認する場です。

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2回のユーザカンファレンスでは、科学界を代表する名だたる企業各社の皆様による講演が行われました。講演者のご所属企業は、AbbVie社、Ajinomoto Bio-Pharma Services社、Ambrx社、Amgen社、AstraZeneca社、Bayer社、Boehringer-Ingelheim社、Bristol Myers Squibb社、Cogent Biosciences社、Corteva Agriscience社、Custom Pharma社、Eli Lilly社、Evotec社、Janssen社、Merck社、Nimbus Therapeutics社、Novartis社、Pelago Biosciences社、Pistoia Alliance社、Roche社、Scitara社、TetraScience社、TIBCO社、PerkinElmer Informaticsなどです。登壇した講演者の所属企業の多くは、デジタルトランスフォーメーションの躍進を遂げて、その利益を享受しています。

NEXUSの活動:アクセラレーション・コラボレーション・トランスフォーメーションの活用
アクセラレーション(加速)は講演者共通のテーマであり、医療産業がリアルワールドデータインフラストラクチャから価値のあるデータを抽出し始めている点が織り込まれていました。その他の主なテーマは、科学的成果を上げるために、分野を超えたコラボレーションやデジタルテクノロジーの利用を積極的に取り入れることでした。レガシーシステムからの変革であれ、紙媒体からの変革であれ、コラボレーションを促進し研究・製品開発の加速化を目指す組織にとってトランスフォーメーションは重要な原動力だったのです。

>>基調講演
NEXUS EuropeとNorth Americaの基調講演で、インフォマティクスの未来についての考察がなされました。デジタルトランスフォーメーションや、AI/ML(人工知能/機械学習)、データビジュアライゼーションや、インフォマティクスプラットフォームとその他の重要なデジタルインフラストラクチャ間の相互接続性向上に至るまで、今、企業や組織の機能は、データとその使い方によって改革がなされています。

David Drake

NEXUS Europeでは、AstraZeneca社 ドラッグディスカバリー ITケーパビリティ リードのデービッド ドレイク(David Drake)氏が、デジタル技術導入と研究開発の変革における同社のデジタルトランスフォーメーション構想と進捗状況を紹介しました。達成した成果は、創薬プロセスの加速化です。

Michael Bem

NEXUS North Americaの基調講演で、Eli Lilly社のマイケル ベム(Michael Bem)氏は、創薬研究でのAI/MLの活用に関する見解を示しました。同氏は、候補薬の臨床化などの解決すべき課題に集中して取り組み続けることの重要性を強調しました。それは、候補薬を円滑かつ速やかに実用化できるようAIを利用し、他者は知っているかもしれない、自分にとっては未知の事を掘り下げることです。質疑応答では、Signals Notebook™などのインフォマティクス ソリューションには、AI/MLモデルを手軽に使うためのデータ構造化機能があるため、AI/MLの技術を有効活用できることにも言及しました。

David Gosalvez

PerkinElmer Informatics サイエンス&テクノロジー担当 エグゼクティブディレクターデービッド ゴサルベス(David Gosalvez)は、基調講演「Power of the Suite」で、PerkinElmerのSignalsプラットフォームの基本はコラボレーションにあると述べました。具体的には、アプリケーションの改善のためのお客様との協力、ならびに、Signalsプラットフォームのコネクタ開発パートナー提携についての2つの内容が話されました。

Michael O’Connell

TIBCO社チーフアナリティクスオフィサーのマイケル オコンネル(Michael O'Connell)氏とデータサイエンスマネージャーのニール カヌンゴ(Neil Kanungo)氏は、TIBCO® Spotfire®で使われる主なデータビジュアライゼーションの設計要素をいくつか紹介しました。直感で理解できるデータビジュアライゼーションには、人間の知覚について考慮すべき膨大な変数があります。それは、大きさ/形の違いを解釈する仕組みから、時間・地理空間を可視化する仕組み、解釈の単純化のためのデータの最適なドリルダウン・フィルタリングの仕組みに及びます。

電子実験ノート(ELN)・リサーチ・クリニカル・テクニカルトラックにおける重要なこと
2022年に欧州と北米で開催された4日間の学習・情報交換の重要なポイントをご紹介します。

>> ELNトラック

欧州と北米のNEXUS 2022カンファレンスでは、Signals Notebookを展開・使用してラボのワークフロー改善につなげた実例が発表されました。

NEXUS EUROPE

Roche社のジェン クラーケジェビック(Jen Krakejvic)氏は、検証済みの環境にSignals Notebookを導入し、2,500人を超える研究者のネットワーク化に成功した例を紹介しました。紙媒体や旧式のELNシステムから移行する研究者もいたため、同社は「onboarding factory」を構築してプロセスを管理しました。

Noveal社のピエリック オンデ(Pierrick Ondet)氏は、紙媒体からのデジタル化の道のりや、PKIと協力した在庫・材料ライブラリの導入、過去のデータと旧システムの移行経緯について話しました。1年後の調査では、同社ユーザの100%が新システムを必須のツールであると回答し、95%が生産性を向上できたと回答しました。

Givaudan社のアンドレアス ミューヘイム(Andreas Muheim)氏も、オンプレミスのELNからPerkinElmer Signalsへ移行した経緯について講演しました。ユーザが特に注目した点はPerkinElmer Signalsのスピードと直感的な操作性です。350人のユーザが1か月あたり約1,000回の実験を行うことができます。同社がトランスフォーメーションに成功した秘訣は、導入の拡大とイノベーションの実現のために、重要な見込みユーザのポジショニングを行ってきたことです。

Custom Pharma Services社は、今、まさにデジタルトランスフォーメーションに取り掛かろうとしています。同社のフォーミュレーション デベロップメント マネージャーのミシェル ギラルディ(Michele Ghirardi)氏は、Signals Notebookに移行した理由は脱紙媒体とクオリティ・バイ・デザイン (QbD) 能力の向上であると述べています。

Ajinomoto Bio-Pharma Services社のスタン コーエン(Stan Coene)氏は、医薬品受託製造において、紙媒体のELNからSignals Notebookへの移行により、低分子の医薬品有効成分の開発レポートとスケールアップ実験レポートの作成プロセスを改善できた事例について紹介しました。同社では、特定の顧客が、完了済み実験について実験経過閲覧システムにアクセスできるように設定にしたことで、顧客とのコミュニケーション過程で重要な情報が失われてしまうことを軽減するとともに、リアルタイムに近い状態で精査できるようになりました。Signals Notebookに移行することで、ITにおけるボトルネックを削減し、システムを管理しているIT部門への依存度を軽減できました。

NEXUS NORTH AMERICA

Janssen社ヨースト ブラッキー(Joost Brakkee)氏は、SNAP(Signals Notebook Accelerated Project)について話しました。SNAPとは、世界中に約2,000人いるJanssen社の研究開発者にSignals Notebookを導入するためのプロジェクトです。今後は、ユーザ数を増やし、データファクトリの利用を検討し、新機能を展開する計画を立てています。

マーガレット パンコスト-ハイデブレクト(Margaret Pancost-Heidebrecht)氏は、Novartis社が、旧式のELNシステムからSignals Notebookに移行して、Medicinal Chemistry、Combi-chem環境内で使用した事例を紹介しました。さらに同社では、知的財産権に関する作業のための読み取り専用ビューアや、リポジトリ全体をスキャンして創薬のための合成ステップを検出するツールなどの、カスタム統合機能を開発しました。

>>リサーチインフォマティクス トラック

カスタム統合機能から高品位のビジュアライゼーションに至るまで、研究者は、今までにない方法でインフォマティクスを活用し、研究を簡略化・自動化・高速化しています。

NEXUS EUROPE

Pelago Biosciences社のリカルド アルム(Rikard Alm)氏は、Excel・Prism・Scripts & R-shinyからSignals NotebookとTIBCO Spotfire搭載のSignals VitroVivo™に移行することで、アッセイデータ管理システムを変革した事例について考察しました。アルム氏は、PerkinElmer Informaticsのツールを選択した根拠を、構造化と柔軟性のバランス、自動化機能、データの完全性とデータ分析が容易な最新のインフラストラクチャなどであるとしました。

Evotec社のカーステン コッティグ(Karsten Kottig)氏は、従来の画像データ管理から予測データサイエンスの統合へと変化しているなかで、セルペインティングの大容量・高次元のデータ解析が直面する課題を明らかにしました。

エバ ニッティンジャー(Eva Nittinger)博士は、AstraZeneca社が自社開発したデノボ分子設計ツール「reINVENT」の使用例を紹介してAIの世界にいざないました。プレゼンテーションでは、TIBCO Spotfireが、reINVENTで得られた演算とビジュアライゼーションの両方を後処理するための重要な要素として使用されていることが示されました。

マイケル マンソン(Michael Munson)氏は、Astra Zeneca社のワクチン用脂質ナノ粒子・標的ゲノム編集の開発にTIBCO Spotfireを使用した事例を紹介しました。この研究分野で収集・解析されるデータは、多様・複雑・膨大です。TIBCO Spotfireは、アプリケーション内で研究者が自力で高度な知見を得ることができるため、データの効果的なビジュアライゼーション・検索・共有に役立ちます。

AstraZeneca社データアンドインフォマティクスリードのヴォルフガング クルート(Wolfgang Klute)氏は、データ使用について詳細に調査し、化合物データの構造化と、そのデータのさらなる活用のための取り組みについて考察しました。

科学技術の最前線の研究では、今までにない革新的なソリューションが必要となることも度々です。AstraZeneca社のジャスティン モーリー(Justin Morley)氏とヨハン ユーランダー(Johan Ulander)氏は、「Spotfire as an Enabler for AI-Augmented Drug Discovery and Development」の講演で、市販ソリューションにはないアプリケーションを迅速に開発するための革新的なツールについて説明しました。そのようなソリューションには、データサイエンス・インフォマティクス・ITなどのコラボレーションが必要です。

NEXUS NORTH AMERICA

Merck社のラファエル フェルナンデス(Rafael Fernandez)氏は、Signals Image Artist™のワークフローとSignals VitroVivoを使って、1日あたり数テラバイトもの膨大なハイコンテンツスクリーニング(HCS)データの解析を簡略化・管理している事例を紹介しました。同氏は、Signals Image ArtistとSignals VitroVivoによって、データから結果を得るためのプロセス全体が完成したことを強調しました。

Amgen社のアンジャリ ビサリア(Anjali Bisaria)氏も、PerkinElmerのOpera Phenixハイコンテンツイメージングシステムや、Columbus(現在のSignals Image Artist)、Signals VitroVivoを導入し、ミニスクリーニングアッセイを開発したことについて説明しました。Amgen社の環境におけるColumbusの利点の1つは、3D画像解析によってアッセイ開発のQC解析がシンプルになったことです。

Cogent Biosciences社のギャレット ミーク(Garrett Meek)氏は、列内の非常に複雑な計算を避けるために、TIBCO Spotfireのデータ機能と教師あり機械学習(ML)を併用する方法について説明しました。

Corteva社のシャール イーノス(Sherl Enos)氏は、Cheminformatics Workbench Solutionに関する、同社とPerkinElmer Informaticsの18か月にわたるコラボレーションについて述べました。この結果をバイオデータと重ね合わせてActivity Cliffを特定し、リード化合物の生成と最適化を行うための高度なクエリオプションとビジュアライゼーションを実現するプラットフォームが生まれました。

>>クリニカルトラック

今回のNEXUSの講演者は、コラボレーションを強化し意思決定を迅速化するために、画期的な方法でインフォマティクスを活用しています。その分野は、翻訳解析、医療データレビュー、臨床試験の異常値検出など様々です。

NEXUS EUROPE

Bayer社のシニアデータサイエンティストのペッカ ティーッカイネン(Pekka Tiikkainen)氏は、TIBCO Spotfireダッシュボードを使って、RAVENシステム上に構築した医療レビューシステムでの異常値・外れ値を検出している事例について紹介しました。このソリューションでは、臨床データポイントの欠落や時系列の外れ値を特定します。

Pistoia Alliance社コンサルタントのジョヴァンニ ニサト(Giovanni Nisato)氏は、臨床分野におけるFAIR原則(検索可能・アクセス可能・相互運用可能・再利用可能)の導入によって得られる臨床試験データの付加価値などについて説明しました。FAIR4Clinガイド第1.0版が、2022年の終わりまでに公開リソースとして公表される予定です。

Boehringer-Ingelheim社のウテ バーハード(Ute Burhard)氏は、試験中に支援付きセルフサービスのクリニカルデータ解析を用いて臨床判断を短縮するVisual & Integrated Support of Translational Analysis(VISTA)を紹介しました。VISTAは、過去3年間ですでに100件を超える臨床試験をサポートしています。

NEXUS NORTH AMERICA

Ambrx社のトン シェイ(Dong Xu)氏は、PerkinElmer Informatics(PKI)のソリューションとTIBCO Spotfireがリアルタイムの医療データレビューに最適である理由を紹介しました。そのなかで、PKIのプラットフォームによって、患者登録・有害事象・投与情報・薬剤の有効性などの様々なアプリケーションで、効果・効率・生産性が高められたことを説明しました。

Bristol Myers Squibb社のプレム ナラシムハン(Prem Narasimhan)氏は、大規模な不均質データセットにおいて、臨床試験中の外れ値の識別を高速化するツールが必要とされることについて説明しました。このためには、利害関係者がデータにアクセスし、他者への依存を最小限に抑えながらリアルタイムで解析する機能が必要です。

>>テクニカルトラック

NEXUS North America 2022のテクニカルトラックでは、AbbVie社とNimbus Therapeutics社の講演者が、膨大なデータセットを適切に管理するPerkinElmer Signalsプラットフォームのツールについて考察しました。

AbbVie社のエリース ジェフロア(Elyse Geoffroy)氏は、ビジュアライゼーションにより過負荷状態の単一ダッシュボードを使わず、必要に応じて動的生成方式のダッシュボードを使用することで、応答時間を短縮する方法を説明しました。

Nimbus社のレベッカ カラッツァ(Rebecca Carazza)氏は、バイオテクノロジーバンドルに含まれるビジュアライゼーションの使用と、チーム間のコラボレーションを効率化するための活用例について話しました。ライブラリを一元化したことで、各チームがTIBCO Spotfireのデータにアクセス・インポートできるため、必要とするデータへのドリルダウンができるようになりました。NEXUS 2023で皆様にお会いできることを楽しみにしています。詳細をご期待ください。

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Chris Stumpf

クリス スタンプ(Chris Stumpf)
PerkinElmer Informatics シニアプリンシパル マーケティング プロフェッショナル

スタンプは、PerkinElmer Informaticsでマーケティングプログラムを担当するシニアプリンシパル マーケティングプロフェッショナルです。分析機器・インフォマティクス業界で、医薬品・ライフサイエンスから化学物質・材料に至るまで20年を超える経験があります。Purdue Universityで分析化学・質量分析のPh.D.を取得しています。

メアリー ドンラン 博士(Mary Donlan, Ph.D.)
PerkinElmer Informatics プロダクトマーケティング エグゼクティブディレクター

メアリー ドンラン博士(Mary Donlan, Ph.D.)はPerkinElmer Informaticsでプロダクトマーケティングチームを率いています。マーケティング・ビジネス開発・フィールドアプリケーションでのライフサイエンス企業向けソフトウェアに関する20年以上の経験があります。また、University of Pennsylvaniaで化学の博士号を取得しています。